統計的エミュレーションと機械学習は、工学や物理科学に見られる複雑なシステムの挙動を予測し、理解するために広く使われています。機械学習モデル(SmartUQではエミュレーターと呼びます。一般にはサロゲートモデルとも呼ばれます)は、シミュレーションや試験などのデータで学習し、システムの応答をすばやく予測します。こうした予測モデルは、キャリブレーション、感度解析、最適化、不確かさの伝播など、大量のサンプリングを必要とするあらゆる解析に使えます。
SmartUQの画期的なエミュレーションアルゴリズムは、大規模なデータや高次元のシステムにモデルを当てはめる際の壁を取り払い、不確かさの定量化と解析に新たな可能性を開きます。特許出願中の技術により、連続値と離散値の入力を容易に扱い、単変量・多変量・過渡・関数型の出力を持つ軽量なエミュレーターを構築できます。しかも、そのすべてを非常に高速に行います。
エミュレーターとは、複雑な物理システムやシミュレーションについて、入力の組に対する出力を模倣する統計的な機械学習モデルです。高精度で高速なエミュレーターを構築することは、解析や不確かさの定量化において欠かせないステップです。シミュレーションや物理試験をエミュレーターに置き換えると、評価の速度が飛躍的に上がり、コストも大きく下がるため、時間や費用の面でこれまで難しかった多くの作業が可能になります。任意の入力条件に対する出力を高速に予測できることは、設計空間の探索、最適化、キャリブレーション、感度解析、不確かさの伝播において非常に大きな価値があります。
ジェットエンジンのシミュレーションや試験のように、システムが大きく複雑になるほど、エミュレーションの効果は大きくなります。統計的エミュレーターは多くの課題で成果を上げてきましたが、大規模・高次元の問題に適用すると深刻な数値的問題に直面します。そのため、大規模で複雑なデータからエミュレーターを構築することは、解析と不確かさの定量化における大きなボトルネックと広く考えられています。
SmartUQは、多次元の大規模データに対応する画期的なエミュレーション技術を持っています。高精度なエミュレーション手法により、複雑なシステムの入力から出力までの空間全体をすばやく把握できます。標準的なノートPCで、1,000点のエミュレーターなら数秒、4,000点でも数分で構築できます。従来の手法では、同じデータでのエミュレーター構築に数時間から数日かかることもあります。
例
大規模エミュレーション多変量応答エミュレーターは、自動車のシミュレーションや試験のように、連続値の入力が複数あり、出力も複数あるシステムに有効です。効率が上がることで、出力と入力の関係を一つずつではなく同時に探索・理解でき、プロセス全体がこれまでになく速くなります。
例:
ここに示すエミュレーターは、入力変数10個、出力変数3個の750点のデータに当てはめたものです。一般的なノートPCで、SmartUQがこのエミュレーターの構築にかかった時間は8秒未満でした。
多変量応答エミュレーションの例1
多変量応答エミュレーションの例2
多変量応答エミュレーションの例3混合入力エミュレーターは、連続値と離散値の両方の入力を持つシステムを扱うときに役立ちます。離散値の入力には、固定された部品の組み合わせや、まったく異なる種類の機器・サブシステムを含むシミュレーションなどがあります。混合入力エミュレーションを使えば、性質の異なる設計についても、少ない手間でエミュレーターを構築して解析できます。より多くの選択肢を一度に検討できるので、より良い設計につながります。
航空機エンジンのシミュレーションでいえば、複数の異なるソルバー、タービンブレードの複数のサイズや形状、タービンと圧縮機をつなぐ伝達機構の複数の種類などが離散変数の例です。
混合入力の問題の一例は放射線漏えいのモデルです。水の流量のような連続値の入力と、放射線源の種類(汚染された機器、燃料棒、ガラス固化した使用済み燃料など)のような離散値の入力を含むことがあります。
例:
この例は、6つの連続値入力と、5水準の離散値入力1つを持つ単変量応答の混合入力エミュレーターで作成しました。一般的なノートPCで、SmartUQが500点のデータからエミュレーターを構築するのにかかった時間は9秒未満でした。
混合入力エミュレーション:複数の水準
混合入力エミュレーション:一つ抜き交差検証(Leave-One-Out)の比較関数型や過渡的な出力を持つシミュレーションは、工学と物理科学のあらゆる分野で使われています。関数型応答エミュレーターは、時間や距離のような関数型の入力変数を少なくとも1つ含みます。シミュレーションを1回実行するごとに、出力は関数型入力の値の組に対応した値を持ちます。
一例は、翼の表面抗力を計算する翼型のシミュレーションです。このシミュレーションには、時間と翼の長さ方向の距離という2つの関数型入力変数と、平均対気速度、表面コーティングの種類、翼断面の形状パラメータなど、関数型でない変数がいくつかあります。各シミュレーションは関数型でない変数の1つの組で実行されます(たとえば1回のシミュレーションでは、表面コーティングと形状は1種類だけです)。出力である表面抗力は、各時間ステップ、翼の長さ方向の各位置で計算されるので、シミュレーションごとに、関数型入力変数に対する出力変数の関数が得られます。つまり、表面コーティングと形状の各組み合わせに、翼の長さ方向とシミュレーション時間にわたる抗力の結果が対応します。
SmartUQには関数型エミュレーター専用の手法があり、入力変数と出力変数の関数的な対応を活かして、エミュレーター(サロゲートモデル)の構築と利用を効率化します。時間ステップや位置などの関数型入力の値は、ほかの入力変数より桁違いに多いのが普通なので、SmartUQはずっと大きな関数型データをエミュレーションできます。
例:
過渡応答エミュレーターのプロファイル比較