設計から実際の使用まで、医療機器産業のいたるところに不確かさがあります。同じ患者は二人といないため、エンジニアや管理者は、さまざまな使用条件のもとで機器がどう機能するかを、許容できる確信の水準で知っておく必要があります。ほかにも、精度の不十分な設備、原材料の特性のばらつき、熱処理のプロセスといった製造上のばらつきから生じる不確かさもあります。こうしたばらつきは性能を不確かにし、部品の品質低下や寿命の短縮につながることがあります。不確かさの定量化(UQ)を使えば、こうした不確かさの原因をよりよく理解し、管理し、減らすことができます。その結果、機器の設計、製造、保守を効率化し、機器の安全性と有効性を高められます。
FDAのガイダンスが示すとおりに設計の検証と妥当性確認(V&V)を十分に行うには、患者ごとの違いや製造ばらつきといった不確かさを考慮するため、さまざまな使用条件のもとでシミュレーションを行わなければなりません。感度解析や入力の不確かさの伝播のように統計的に意味のある解析を行うには、十分な数のサンプルを得るために、非常に多くのシミュレーションが必要です。また、トレードオフの検討や設計空間の探索では、設計パラメータの変化に対する注目量(QOI)の応答をとらえるために、何度もシミュレーションを行う必要があります。そのため、初期の設計検討でもV&Vの計画でも、高性能計算(HPC)のリソースと長い計算時間が必要になることがよくあります。幸い、SmartUQのような高度な解析ツールを使えば、医療機器産業でのモデリングの計算負荷を減らせます。
SmartUQは、ペースメーカーや人工股関節からMRI装置まで、新しい機器の設計にも既存の機器の解析にも使えます。SmartUQは、試験とサンプリングの進め方の指針に加えて、高精度シミュレーションや物理試験を補う予測モデルを提供します。この予測モデル、つまりエミュレーターは、最小限の回数のシミュレーションや物理試験の結果から学習し、新しい運転点での予測に使えます。エミュレーターは、HPCに頼らなくても、複雑な非線形のふるまいや高次元のシステムを、従来の方法より速く正確に扱えます。SmartUQには、高次元の入力、関数型や過渡的な応答、点群やメッシュのデータ、離散的な入力といった複雑なデータを扱うために開発された、さまざまな種類のエミュレーター(サロゲートモデル)があります。
V&Vの推進に伴い、多くの主要な組織が医療機器のV&V専門のワーキンググループを立ち上げています。その中には、医療機器のV&Vの手順を標準化している米国機械学会(ASME)の分科会V&V 40もあります。また、ASME V&V 10は、下の図のような妥当性確認のワークフローを策定しています。このワークフローは不確かさの解析を取り入れ、起こりうるすべてのシナリオでシミュレーションモデルの妥当性を確認するものです。シミュレーションモデルを物理データでキャリブレーションするためのDOE、統計的キャリブレーション、感度解析、不確かさ伝播といったSmartUQのツールは、V&Vのワークフローを構成する要素です。
図2:検証と妥当性確認(V&V)のワークフローそれぞれの図は、シミュレーションツールと組み合わせてV&Vのワークフローを構成できる、SmartUQのソフトウェアの機能を表しています。
V&Vのワークフローを取り入れると、規制の要求を満たせるだけでなく、後の設計段階で必要になる高価な物理試験を減らし、新製品の市場投入までの時間を短くし、モデルと新しい設計への確信を高める効果も期待できます。
UQと医療機器についてさらに知りたい方は、ホワイトペーパー「医療機器産業のための不確かさの定量化」をご覧ください。冠動脈ステントの不確かさの定量化とモデルの妥当性確認を最初から最後まで行った事例が含まれています。