新薬を開発し、規制当局の承認を得るまでに、科学者、薬剤師、エンジニアはいくつかの種類の課題に直面します。そのひとつが、新薬の開発と、規制に適合していることを示すエビデンスにつきまとう不確かさを理解することです。同じ患者は二人といないため、科学者やエンジニアは、さまざまな条件のもとで薬がどう作用するかを、許容できる確信の水準で知っておく必要があります。ほかにも、投与量のばらつきや、元の化学的な処方の変更から生じる不確かさもあります。こうしたばらつきは効果を不確かにし、製品の品質低下や有効期間の短縮につながることがあります。さらに、臨床試験にかかる費用や、厳しい政府の規制を満たすことも課題です。
こうした課題に直面したとき、大きな力になってきたのがシミュレーションです。シミュレーションを使えば、科学者やエンジニアは、大規模で費用のかかる臨床試験を行わなくても、ある集団に最適な投与量を決め、感度や不確かさをよりよく理解できます。ただし、シミュレーションにはシミュレーションなりのリスクと課題があります。
また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックでは、主要なニュースのたびにモデリングとシミュレーションが取り上げられました。公衆衛生機関にとっては、COVID-19の感染拡大を予測するうえでモデリングとシミュレーションが欠かせません。製薬企業にとっては、ワクチンの開発を加速するうえで欠かせません。
米国食品医薬品局(FDA)は、医薬品と医療機器の開発と規制上の評価に、モデリングとシミュレーションを使うことを推奨しています。FDAがシミュレーションとモデリングの活用を勧めている例には、次のようなものがあります。
FDAは、イノベーションと、命を救う新しい技術を速やかに社会に届ける道を開くために、新しいモデリングとシミュレーションの方法論の開発に業界とともに取り組み続けています。
シミュレーションとモデリングには多くの利点がありますが、モデル情報に基づく医薬品開発(MIDD)にも課題は少なくありません。モデルの開発に使うデータの質、医薬品開発や規制上の重要な判断への適用が一貫していないこと、in vivo試験や臨床試験のように出どころの異なるデータの扱い方などです。大きな課題は2つあります。ある集団に含まれる多くのばらつきを考慮するための計算コストと、シミュレーションモデルの妥当性を確立することです。SmartUQの予測分析と不確かさの定量化のツール群を使えば、インシリコ試験を行うコストを減らし、得られる情報の価値を高められます。
統計的キャリブレーションとは、シミュレーションのキャリブレーションパラメータを現実によく合うように調整しながら、モデルの不確かさを定量化し、全体の不確かさを減らすために改善すべき点を示すプロセスです。SmartUQのツール群では、このプロセスは、キャリブレーションと妥当性確認のための効率のよいヒト臨床試験の計画を立てるところから始まります。SmartUQには、シミュレーションのDOEをもとに、それを補う臨床試験のDOEを組み立てる「シミュレーションから臨床試験へ」のような特殊なDOEがあります。
モデルの妥当性確認とは、モデルの用途から見て、モデルがどの程度正確に現実世界を表しているかを判断するプロセスです。理想的な妥当性確認は予測的な妥当性確認ですが、不確かさがあるなかでこれを行うのは難しいことがあります。入力の不確かさの分布、不一致のマップ、エミュレーターの分散の不確かさから得られる、不確かさについてのあらゆる情報を解釈する最善の方法を決める必要があるからです。たとえば、カプセルに封入した薬の吸収速度を予測するのに、生理学的薬物動態(PBPK)のシミュレーションを使うことがあります。実験で得たin vivoのデータをシミュレーションと組み合わせれば、シミュレーションがどこでデータを確実に予測できるかを判断し、予測の不確かさを定量化できます。これは、新しい薬の構成が、不確かな条件のもとでも生体外・生体内相関(IVIVC)の基準を満たすかどうかを判断するのに役立ちます。さらに、妥当性確認のプロセス全体を通じて、確認のための「健全性チェック」として感度解析を行い、局所的・大域的な感度が注目する出力にどう影響するかを確かめることもできます。